発達段階と教育そして自己紹介
伊藤亮吉

  2014年4月より 名古屋市立中島小学校の講師
昭和49年三重大学教育学部 物理学教室卒業
平成24年3月退職
趣味 アマチュア無線 コールサインJA2NTV  電子工作,もの作り
理科教育(教材開発),
発達心理学(ピアジェの心理学、認知心理学)2001.9.20 Bを追加
 
@ 子どもの発達と教育に関心を持った理由
 教師になりたてのころ,学校自体が新設校で毎月のように転入生が入ってくるので,落ち着かない雰囲気の学校であった。当然,毎年,校舎の増改築が行われるし,教師もどんどん替わるので学校自体が落ち着かない。
 そんな学校で,繰り上がりのある足し算を指導していたとき,全然わからない子どもがクラスにとてもたくさんいた。転校を繰り返した子どもがとてもたくさんいたので,落ち着いて教育を受けられなかったのだろう。そこで,わからない子を放課に残したり,授業後残したりして一生懸命個別指導をした。しかし,子どもたちの中から,「あの子は算数ができない子」などという声が挙がり始めたし,なによりも子どもが友だちと遊ぶ時間を奪っていることに気がついた。そんなことから,「一斉授業でもなんとか子どもがわかる方法がないものか。」と考えるようになった。このころから,子どもの発達と教育について勉強する必要性を感じ始めた。
A ピアジェの発達理論に関心を持ったきっかけ
 4年生の「ものの重さと体積」の授業で,形が変わっても重さは変わらないことに納得しない子どもがいた。その授業は仮説実験授業の向こうを張って,「繰り返し実験授業」と名前を付けて子どもが自分が納得できるまで実験を繰り返し,結論を導き出す授業形態を取り入れていた。従って,疑問をもっていたり,一つの条件での真実でも状態が変われば結果は変わると思っている児童も自分が納得するまで実験ができる。そのため,いくつかの場面では「こんな形にすれば重さが変わる。」と考えていた子どもも最後には「形をどんなに変えても重さは変わらない。」ことに気づくことができた。(このことについて「算数のドリル学習のように復習すればわかる。というのは理論としていかがなものか。」という指摘もあった。)
 ところが,条件を変えて何度実験をしても重さは変わらないのに「重さは変わる」と結論つけた児童が4名ほどいた。自分が確かめた実験結果さえ認めようとしない子どもを見て「いったいどうなっているのだろう。やはり結果を覚えさせた方がいいのだろうか。」とさえ思った。これが,昭和60年ころのことである。「子どもは重さの保存をどう認識していくか」へ
 ところが,平成3年に,ピアジェの「量の発達心理学」(銀林,滝沢訳)を読む機会があった。この本を読んで驚いた。先ほどの児童と同じ例がでているではないか。それどころか,その授業で子どもが発言した内容とうり二つの発言が紹介されていたのである。もう40年も前の,それも遠く離れたヨーロッパの子どもと同じ反応が現実に目の前で起こっていたのである。
 そこで,学校は変わっていたが同じ4年生に同じ授業をしてみた。すると具体例こそ違うものの先ほどの授業と考え方が同じ内容の発言がでてきたのである。これには再度驚かされた。やはり子どもの発達には規則性があるのだ。そこで,先ほどの本を訳された一人でもある滝沢武久氏にこの授業の記録をもって子どもの発達についてご指導いただいた。
 滝沢氏には,発達について実に興味深いお話をお聞きすることができた。特に,子どもの具体的な発言を元に子どもの発達について事細かにご指導いただいた。子どもの自己中心性や試行錯誤の段階から反省的(内省的)思考の段階に至る発達段階についてのお話は実に興味深いものであった。
「子どもの発達と認識方法」へ
 その後,先生のご指導を基に一人一人の子どもを見ていくと実に子どもの考え方がよくわかるようになった。これをきっかけに発達と教育,発達と教材開発に興味を持つようになり,現在に至っている。
 
 B 子どもの思考と潜在意識 2001.9月
 理科や算数に関する子どもの考え方についてはずいぶん実践してきました。しかし、最近考えることの一つに、二者択一の問題では(めちゃくちゃ答えても50%は正解するはずである。)間違える子は必ず全問間違うことの不思議さです。二者択一の問題だけではなく、授業中にも結構こうしたことは見受けられます。つまり、この子は、それなりに考えているのですから+と-が反対になっているかのようなのです。これが逆になれば全問正解となります。
 こんな事を考えているとき、養老猛氏の「唯脳論」と下條信輔氏の「サブリミナルマインド」を読みました。そこでは脳の働きがずいぶん明らかにされていることを知りました。特に、潜在意識の問題に興味を持ちました。A=B,B=C,C=DからA=Dを導き出す子の考え方はよくわかります。ですから、その子の間違った段階もわかるのです。しかし、このうちいくつかの過程が潜在意識の中で行われ、A=Dを突然導き出す子については、どこに考え方の誤りがあるのかわかりません。しかし、この潜在意識の過程のどこに誤りがあるかわかれば、始めに述べた疑問は解決できます。
 これからの実践では、この潜在意識をどう測定していけばよいかを勉強したいと思っています。

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